マウスピース矯正(インビザライン)の仕上がりはシュミレーション次第!
投稿日:2023年12月19日
カテゴリ:矯正ブログ
こんにちは巣鴨S歯科矯正歯科です。
今回は、
マウスピース型矯正装置インビザライン(以下、インビザラインと表記します)の
矯正前検査を行った後、装置が届くまでに
歯科医師がどんなことをしているか
について記載していきます。
インビザライン矯正治療を行うための診査・検査
まず最初は、インビザライン矯正治療の治療計画を立てるため、複数種類の診査を行います。
レントゲン3種類:歯のレントゲン、お顔の骨格のレントゲンを横からと正面から
CT:骨の量、質が非常に重要になります
光学スキャン:マウスピース型矯正装置を作成するデータとして、お口の中をスキャンしていると同時にモニターで見ることが出来ます
口腔内写真:お口の中の写真、治療過程でも経過記録として撮影していきます
顔貌写真:お顔の写真(こちらは参考写真で、下記に出てくる患者様のものではありません)
印象採得:歯の型取り
矯正の検査はどんなことをするの?巣鴨S歯科矯正歯科で行う4つの検査について
これらのデータを分析、
インビザライン社に提出しクリンチェック(シュミレーション)を行います。
クリンチェックは矯正医が必ず行う
インビザライン社の技術者がデータを受け取ると、クリンチェック(シュミレーション)
を作ってくれます。
ここで出来上がってくるのはいわゆる「たたき台」です。
矯正医はここから最終的なクリンチェックが完成するまで
インビザライン社の技術者とやり取りを繰り返します。
今回は、先日来院され矯正治療を開始した患者様を例に説明していこうと思います。
主訴は
「前歯が出ていて、口元を下げたい」でした。
主な問題点を列挙すると下記の通りとなります。
・出っ歯
・噛み合わせが深い
・隙間がある歯並び(空隙歯列、画面上の黄緑の数字が隙間の箇所です)
・右上7と右下7がすれ違って噛み合っていない
・舌が大きい傾向
検査によって得られたデータ( 光学スキャンデータ・レントゲン(歯列、顔貌横顔、顔貌正面)・CT・口腔内写真・顔貌写真・所見 etc )をインビザライン社に提出
↓
インビザライン社の技術者が製作した1つめのシュミレーション(クリンチェック)が届きます。
最近はCTデータをクリンチェックに取り込むことが可能となり、骨レベルでの評価を治療計画に落とし込むことができるようになりました。
1つめの治療計画では、歯根が骨から出ているところが下顎に多数見られ、
矯正治療終了後に骨から歯根が出てしまい(フェネストレーション)、
違和感や痛み、歯肉退縮の原因、将来的には抜歯となる可能性があります。
ここから、修正を加えていきます。
インビザライン社の技術者に修正を依頼するだけでなく、
歯科医師が直接シュミレーション(クリンチェック)を動かして修正を加える事もできます。
この患者さんの場合には、私が自分で修正を加えた以外に、
インビザライン社の技術者とのやりとりを6回ほど行い修正を加えて、やっと患者さんにお見せできるシュミレーションが出来ました。
そして出来上がった最終シュミレーションがこちらです。
骨の中に歯根が収まり、歯もきれいに並び、前歯を下げることが出来そうです。
このように、クリンチェック(シュミレーション)が非常に重要です。
インビザライン社の技術者頼りにとどいたシュミレーションをチェックもせずに治療を遂行したり、
歯科医師、患者様の意向が反映されていない、矯正治療が進むなんてことがあってはなりません。
インビザラインは、矯正治療を行う担当医が
いかに考え、何をしているかによって
素晴らしい矯正装置にも
たいしたことない装置にも
ひいては
危険な装置にもなり兼ねません。
インビザライン治療の場合、矯正医が一番時間をかけるところ、それは間違いなく治療計画を立てる時間です。
「矯正の歯医者さんがたくさんあってどうやって選んだらいいか分かりません」とよく伺いますが、
矯正治療をこれからマウスピース型矯正装置を始めたいと思っている方は、
担当してくださる先生が、シュミレーションの説明までしてくださる先生だと
安心してお任せできると思っていただいてよいと思います。
以下参考までに、私がこの患者さんのシュミレーション作成に注意したところ
この患者さんの場合、2つの治療方針が考えられます。
①小臼歯を抜歯し前歯を下げる
②小臼歯抜歯をせずに奥歯を後ろに移動する
【①:小臼歯を抜歯し前歯を下げた場合】
前歯が出ている場合などには多くの患者さんに矯正の治療方針として適応する方法です。
しかし、抜歯して前歯が下がると、その分お口の中が狭くなります。
この患者さんの場合は舌が大きいことより、舌が押し込められるようになってしまうことが考えられ、いびきを助長してしまったりとおススメできませんでした。
【②:抜歯をせず奥歯を後ろに移動させた場合】
実際に採用した、治療方針はこちらでした。
小臼歯を抜歯をせず奥歯を後ろに移動させましたが、奥歯の後ろの骨の余裕が限られており、
前歯部でIPR(歯と歯の間を削る方法)も合わせて採用しています。
画像でお示ししているのは1セット目のシュミレーションですので、1セット目としてはIPR量を最小限にしています。
治療方針②では、1セット目で前歯は治療前後で3.5mm下がっています。
1セット終わった後、修正箇所を患者さんとご相談しIPRを追加にさらに1.2mm程度前歯を下げました。
抜歯をしなくても治療前に比べ4.7mm前歯を下げることが出来ました。
この患者さんの主訴は「口元を下げたい」でしたが、
・ご相談の際に「歯を抜くことに抵抗感がある」とお話をされていたこと、
・検査の際の口腔内所見として【舌が大きめ】である為、小臼歯抜歯をして前歯を下げるとお口の中が狭くなり、就寝時にいびきが出やすくなる可能性がある
以上2点を患者さんとご相談し、治療方針②の小臼歯抜歯はせず、上顎大臼歯の遠心移動(奥歯を後ろに移動させる方法)と、IPRを適応することにより、歯を並べていくことにしました。
上記は、治療方針を考えた内容のあくまで一部です。
矯正歯科医はシュミレーションを完成させるまでに、患者様のことをいろいろ考えて治療方針を作成しています。
(…ただ、マウスピース矯正を行っている歯医者が全員そうとは限らないようで、非常に残念に思うところもありますが、
私は日々こうやって患者様と向き合あっております♪)
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